調べたこと

賃金・賞与・退職金

賃金になるものとならないもの

賃金は労働の対価

労働の対価として従業員に支払われるもの全てが「賃金」。
「〇〇」のような場合に支給される。
など就業規則で支給要件がはっきりしているケースでは「賃金」にあたる。
ただし就業規則に定めなく、そのつど任意で支給しているような場合は「賃金」とならない。
通勤手当や定期代は就業規則に要件が明確化されていれば賃金として扱われる。

経費や福利厚生について

経費や福利厚生の側面が強いものに関しては、賃金にならないものもある。
例:出張費、制服などの実費支給や現物支給。社宅や保養所の利用料。

退職金について

退職金は扱いに注意。
退職金が就業規則に明記されており制度化されている場合は、「賃金」になる。
しかし、就業規則に明記されていなくても慣習として退職金が支払われているケースは
「賃金」として扱われる場合もある。

賃金とは

(支給要件が定められているもの)
・毎月の給与(賃金)と手当、賞与
・(就業規則に支給要件が定められた)手当、通勤定期券、食事、退職金
・休業手当

(経費や福利厚生の面が強いもの)
・(任意で支給されている)慶弔金、退職金、
・出張経費、実物給付の作業服や制服
・社宅や保養所などの利用料

(賃金にならないケース)
・怪我や病気で休んだ初日から3日目までの休業給付
・解雇予告手当

●就業規則における賞与の明記について
「会社の業績や個々の成績等を勘案して支払う。業績の状況によって支払わない時もある」

賃金支払いのルール

賃金支払いの5原則

①通貨で支払う
現金で支払うのが原則。
ただし、従業員の同意があれば本人名義の口座銀行振り込みすることも可能。
また通勤定期券など法令で定められたものや、労働協約で定めたのもは現物支給でも
許される。

②直接本人に払う
家族や弁護士であっても代理人を介しての受け取りは出来ない。
銀行振込の場合も本人名義の口座でなければNG。
本人が病気療養中で家族が受け取りに来るケースはOK。

③全額を払う
本人の同意なしに控除は出来ない。
ただし、保険料や所得税、住民税に関しては支払いのため控除は可。
協定控除も可能(労使間で結んだ項目)。

④毎月1回以上支払う
臨時の賃金を除き、月に1回支払わなければならない。
年俸制を導入しているケースでも最低12回に分けて支払う。
日払いや週払いは月1回支払いの条件を満たしているのでOK。

⑤一定の期日で支払う
毎月支払う日を定めておく。
定めた日が銀行の休業日の場合、前後どちらかになるかは就業規則で明記。

その他のルール

ノーワーク・ノーペイの原則
働かなかった日や時間については、賃金を支払わなくても良い。
欠勤や遅刻・早退は賃金控除してもよい。

非常時支払いのルール
・従業員が出産、病気、火災などの災害にあてる費用として請求してきた場合は、
すでに働いていた分の賃金を支払う。
・支払い期日が来ていなくても支払う。ただし、まだ勤務していない分の賃金については支払う義務はない。

基本給と手当

基本給
最低限、毎回支給することが約束された賃金。

各種手当
家族状況、福利厚生、職務、職能、成績など、会社の規定に応じて支給される賃金。
※規定次第で柔軟な使い方ができる。

割増賃金
時間外手当、休日手当、深夜手当は必ず支給しなければいけない。

賃金の決め方

時給制:1時間単位で賃金額を決める
日給制:1日の所定労働時間に対して賃金額を決める
月給制:1ヶ月の所定労働時間に対して賃金額を決める
年俸制:一年の所定労働時間に対して賃金額を決める
出来高給制:成果や量などに応じて賃金額を決める。
      出来高給、歩合給、業績給、インセンティブなどとも呼ばれる。

最低賃金の確認方法

最低賃金

最低賃金は毎年改定10月に発効。地域別最低賃金と特定(産業別)最低賃金の2種類のうち、
高い方を賃金額として設定。正社員だけでなく全ての従業員に適用される。
最低賃金が適用されるのは、勤務される営業所・事業所がある都道府県の基準。

計算に含める手当と除外する手当

計算する時に含める賃金は「毎月支払われる基本的な賃金」で、日給制・月給制・出来高給制は時給に換算して確認する。
除外する手当は「賞与、深夜手当、残業手当」。
厚生労働省の通達により通勤手当・家族手当・精勤手当も除外対象。

最低賃金の確認方法

時給制の場合
時間給≧最低賃金額

日給制の場合
日給÷一日の所定労働時間≧最低賃金額

月給制の場合
月給÷月平均所定労働時間≧最低賃金額
※年間所定労働時間÷12ヶ月

出来高給について

出来高給制は仕事の成果や量に対して賃金を支払う制度。
労働時間の要素が薄くなっているのが特徴。
出来高給の決め方は「出来高の○%を支払う」「1回の単価が○万円」など。

(メリット)
残業代が低く抑えられる
固定的な賃金と出来高給が同じ10万円の場合、通常は所定労働時間よりも総労働時間の方が長い為、
時間単価が出来高給の方が低くなる。

(デメリット)
総労働時間が毎月変わるので月毎に計算が必要になり、賃金額の変動幅が大きいこと。

賃金調整の仕組み

降給と手当について

降給は就業規則に規定がないと出来ない。
法令に昇給のルールを明示する決まりはあるが、降給のルール明示の決まりはない。
そのためルールを設けておくことが望ましい。
基本給を一度昇給させると降給することは難しいので、会社独自の規定で決めることが出来る
手当で対応することが良い。以前は家族手当や扶養手当など生活保障型が多かったものの、現在は業績・功績型が増えている。

降給の規定例

第〇条 賃金の改定  ※昇給も降給もあり得るので「改定」とする
1 賃金の改定は、従業員の勤務成績、会社の業績などを勘案して必要に応じて行う。
2 前項のほか、経営状況の悪化など特別に必要がある場合は臨時に賃金の降給改定を行うことがある。

第〇条 降給 ※懲戒処分とは異なることを示しておく
降給は、査定で一定水準以下、降給、その他各人の技術、能力、経験及び勤怠等を考慮して、降給に値すると判断した時に行う。

休業手当と平均賃金

会社都合の休業には休業手当が必要

会社都合による休業中は、賃金を休業手当として支払う義務がある。(平均60%)
対象になる休業:材料不足、資金不足、機械の故障、営業停止
対象にならないケース:自然災害、ストライキ

平均賃金の算出について

休業手当を支払う際の平均賃金の算定期間は、
平均賃金の計算が必要な事由が発生した日の直前の賃金〆切より以前の3ヶ月。

日給、時給、出来高給の最低保障額
算定期間中の賃金総額÷実労働日数×60%

(平均賃金を使うもの)
休業手当、年次有給休暇の賃金、解雇予告手当、懲戒処分の減給休業保障

割増賃金の種類と割増率

36協定の締結

時間外労働、休日労働など残業をさせる場合は36協定を結び労働基準監督署へ届け出る必要がある。
また、残業をさせた分の割り増し賃金を上乗せさせる必要もある。

法定労働時間(1週間40時間、1日8時間)を越えた時:25%
時間外労働時間が限界時間(1ヶ月45時間、1年360時間)を越えた時:25%
時間外労働時間が1ヶ月60時間を超えた時:50%
法定休日に勤務させた時:35%
深夜(22時~5時)に勤務させた時:25%

割り増し賃金の計算について

算定の対象になる賃金
毎月の通常の労働対価として支払われている基本給や手当

算定から除外される賃金
家族手当、住宅手当、通勤手当、賞与、割増賃金、固定残業代

年俸制は他の賃金制度よりも時間給が割高になる
賞与金額を含めた年俸制であっても、12で割った金額が平均賃金になり、
賞与額を除外してはいけない。

月60時間超の残業について

中小企業の適用は令和2年4月からスタート。
有給休暇を与えることも出来るが、代替休暇制度は、会社が制度を導入することを決めて、労使協定を結ぶことが必要。※ただし管理が煩雑になる。

固定残業制の注意点

固定残業制

労働条件として提示する賃金額の中に一定の残業代を含めておくことを固定残業制という。
固定残業制、就業規則の給与規定に定めておかなければならない。
また、実際にみなし残業代を越えた分には超過した残業代がかかってくる。

(注意点)
・制度を就業規則に明記する。記載事項が決められている。
・制度を雇用契約書に明記する。記載事項が決められている。
・固定残業分を越えた分の残業代は支払う。
・運用内容を給与明細に明記する。記載事項が決められている。
・固定残業代は割増賃金の算定から除外される。

第〇条 固定残業手当

会社は、管理監督及び裁量適用者以外の従業員のうち、会社がとくに指定する者に対し、
次の区分により、時間外労働に相当する割増賃金を固定残業手当として支給する。

(1)総合職 月間〇時間
(2)専門職 月間〇時間

2.前項の金額は対象従業員ごとに雇用契約書及び給与明細書に明記する。
3.従業員が実際に労働した時間によって計算した割増賃金額が、第1項の金額を上回る場合、
会社は、その差額を時間外手当として支給する。

※固定残業代は割増賃金の算定には含まれない。
※固定残業代に上限時間は設けられていない。

未払い残業代

未払い残業代は2年前までさかのぼって請求できる。
特に会社が敗訴するのが多いケースは、名ばかりの管理職

(未払い残業代の要因)
・サービス残業
・不適切な労働時間管理
・管理監督者性のない管理職
・正しく適用されていない固定残業代、変形労働時間制、事業場外のみなし労働時間制、裁量労働制

退職金制度について

退職金制度は任意の制度なので、支給の有無は会社の自由。
ただし、就業規則に退職金規定が書いてあれば支払いの義務が生じる。
現在は成果主義型が増えている。

(改定例)
・成果給をポイント化し毎年積み立てる。
・少額でも退職金制度を維持する
・中小企業退職金共済制度で積み立てるhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000113598.html
・企業型確定拠出年金を利用する。