人事異動の種類
就業規則に明示していれば、人事異動は包括的同意(従業員の同意を得ずに業務命令すること)でよい。
ただし近年は従業員が会社からの人事異動命令を拒否するケースも増えてきている。
①配置転換:職務内容や部署の変更
②出向:元の会社に籍を残したまま関係会社に移る
③転勤:配置転換により勤務場所が変更になる
④転籍:元の会社との雇用関係を終了し、関係会社と雇用契約を結ぶ
⑤役職の任命:役職の任命や昇進、解任、降格など
【包括的同意で人事異動が認められるケース】
①人事異動権を就業規則に記載し、周知している
②人事異動を定期的にひんぱんに行っている
③採用時に職種を限定する合意はしていない(新卒では総合職採用が多い)
役職定年を就業規則に定め、規定の年齢になったら役職を外れて専門職などに移るケースも増えてきている。※役職定年のねらいは後進の育成
人事異動が認められないケース
①業務上の必要性があるか
②従業員の被る不利益が大きいか
③悪意や不当な目的・動機があるか
※職種や勤務地限定で採用した場合、限定した範囲内でしか人事異動が出来ない。
※有期雇用の場合期間内の雇用を重視するため人事異動はしないのが一般的。
懲戒処分のケース
どんな行為が懲戒処分の対象になるか(懲戒事由)?
行う懲戒処分の手段は何かをあらかじめ就業規則に明記しておく必要がある。
(懲戒処分の手段) ※軽い順
戒告
口頭または文書により従業員の将来を戒める。
けん責
従業員の将来を戒めると共に、始末書の提出を求める。
減給
始末書を求め、賃金から一定額を差し引く。
ただし1回あたりの差引額は平均賃金の1日分の半額まで、一定賃金支払期の総額は賃金総額の10%
出勤停止
始末書を求め、一定期間出勤を停止する。
出勤停止期間中は賃金支給はせず、勤続年数にも加えないのが一般的;。
長すぎる出勤停止は避け、暦日2週間程度まで。
降格・降職
役職や職務、職能資格の引き下げ役職の解任などを行う。降格・降職にともなって毎月の給与が減額されることもある。
論旨解雇(ゆしかいこ)
懲戒解雇を緩和した処分。
従業員が深く反省しているなど、情状酌量を図りたい時に退職届の提出を勧告し、退職金を一部
または全額支給する。
懲戒解雇
原則として解雇予告期間のない即時解雇を行う。
労働基準監督署からの除外設定が得られない場合は解雇予告手当が必要になる。
※軽い懲戒事由でも、回数や反省具合によっては重い懲戒処分を与えることは妥当。
その可能性があることは就業規則に明記しておく。
懲戒制度の運用の仕方
(就業規則の整備)
①懲戒事由を定める
主な懲戒事由
①経歴詐欺
②職務上の非違(ひい)行為
③業務命令違反
④服務規律違反
⑤会社施設・物品の私的利用
⑥企業外の講堂
②懲戒処分の手段
どんな懲戒事由にどんな手段をあてるかを決める。
(適正な手続き)
事実確認を行う。懲戒委員会を開いて複数人で審議するなど攻勢な視点で処分を決める。
従業員本人の弁明を聞く。
審議・決定内容を記録・保存する。
休職制度について
雇用関係を続けたまま一定期間労働の義務を免除する制度。
主に私病による休職を想定している。
※業務上での災害による休業は労災で整備されているので。
労働基準法で設定されていないので、休職制度を設けるかは会社で決める。
また賃金についても会社で自由に設定できる(不支給が多い)。
労働の提供がないので労働保険料の支払い義務はないが社会保険は支払い義務がある。
(住民税含めて支払いの方法は決めておく必要がある)
傷病手当金
私傷病で仕事を休んだ場合、健康保険から支給される手当金。
最長で1年6ヶ月。
(支給額の計算方法)
(支給開始前の過去12ヶ月の各月の標準報酬月額を平均した額)
÷ 30日×2/3=傷病手当金の支給日額
(傷病手当金を受け取る条件)
連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
療養(自宅療養含む)を要する病気やケガが業務外の事由によること
病気やケガで仕事に就けないこと
(傷病手当金を受け取れない条件)
給与の支払いを受けている場合
労災保険から休業補償を受けている場合
出産手当金を受けている場合
障害厚生年金もしくは障害手当金を受けている場合
老齢年金を受給している場合
休職後の復帰について
治癒判断の基準は「休職前の業務を通常通り行うことは出来るか」
(就業規則に明記すること)
〇「治療して業務遂行できる状態」を具体的に明示
〇復職を判断する書類を明記
〇「治癒した状態や提出書類などを元に復職を判断する」と明記
〇「休業期間満了後の退職」を規定