調べたこと

労働基準監督署調査と労使紛争

労働基準監督署の調査の種類

労働基準監督署では、労働基準法令に関する各種届出の受付、労災保険の給付などを行うほか、
労働基準法関連の法令違反の調査や取り締まりを行なっている。

労働基準監督署による調査の種類と方法

(主な調査の種類)
申告監督:労働者の相談、申告から始まる調査。
定期監督:管轄区域から任意に会社を選んで行う調査。
災害時監督:大きな業務災害が発生した会社に対して、原因究明や再発防止指導のを行う為の調査。
再監督:過去に指導などを行なった会社、または指導などに従わなかった会社の再調査。

(調査方法)

□臨検(立ち入り調査)
労働基準監督官が立ち入って調査を行う。予告なしに調査に来るのが原則だが、調査日時を指定してから調査に入ることもある。

□呼び出し調査
労基署から呼び出されて資料を持参していく。

労働基準監督署が取り締まる範囲

労働基準法
労使共に守るべき労働条件に関する基準となる法律

労働安全衛生法
職場における労働者の健康と安全を守るための法律

家内労働法
家内労働者の労働条件の向上、生活の安定をはかる法律

最低賃金法
賃金の最低額を定め、労働者の生活の安定をはかる法律

賃金の支払確保等に関する法律
会社が倒産した時の労働者の生活の安定をはかる法律

作業環境測定法
作業環境を確保し、労働者の健康を守る法律

じん肺法
じん肺の予防などに関する法律

労働契約法
労働契約に関する基本的事項を定めた法律

※労働基準監督署が取り締まるのは、労働基準法に関連する法令違反だけ。
例えばセクハラなどは男女雇用機会均等法の範囲なので対応しない。

労働基準監督署の調査の流れ

各種書類のチェックから調査は始まる

定期監督、申告監督、災害時監督問わず労働基準監督署の調査は、就業規則や36協定のチェックから始まる。最近は残業時間を支払わないサービス残業に対するチェックが厳しくなっており、36協定を届けているかどうか、時間外労働、休日労働、深夜労働などが正確に計算されて残業代が支払われているかなどが重点的に調べられる。

行政指導(是正勧告)

調査の結果法令違反がなければ終了。
ただし法令違反があった場合は「違反事項を指導する」という指導がされる。
残業代未払いなどの悪質性の高いものには「違反事項を改善するように」という是正勧告が出される。
未払い賃金の是正勧告では賃金支払命令が出される。
是正勧告は行政指導であって法的な強制力はないが、放置していると悪質と判断され、
書類送検という司法処分を受ける可能性が高くなる。

用意する書類と調査する事項

(調査で用意する主な書類)
●就業規則(給与規則)
●労働者名簿
●賃金台帳
●タイムカード、出勤簿
●シフト表
●雇用契約書(労働条件通知書)
●36協定
●変形労働時間制などの協定書
●定期健康診断個人票
●源泉徴収税の納付書控え
●機械整備記録書
などを1ヶ月〜2年分

(重点的に調査する事項)
●就業規則を届け出ているか
●残業に際して36協定を結んでいるか
●定期健康診断を実施しているか
●タイムカードなどを打刻して、労働時間管理を行なっているか
●残業時間を正しく出しているか
●残業代を正しく計算し、支払っているか。未払いはないか。
●給与明細に残業時間を正しく明記しているか
●衛生管理者や安全管理者などを適正に配置しているか

個別労働紛争の現状と対策

増加する個別労働紛争

契約社員やパートなど様々な働き方が増えてきたことや、ネット上で労働関連法案が誰でもすぐに調べられるようになったため、解雇や長時間労働、残業代未払い、セクハラなど労働環境を巡って労働者が個別労働紛争を起こすケースが昨今は増えてきた。

個別労働紛争の現状

(主なトラブルの原因)
〇解雇・退職勧奨〇ハラスメント〇労働条件引き下げ〇雇止め〇賃金未払い〇配置転換
〇過重労働〇自己都合退職

(主な解決の場所)
交渉、労働基準監督署、総合労働相談コーナー、労働審判、民事裁判

(トラブル防止)
就業規則の作成・周知、就業規則の見直し、雇用契約書の整備、労使間のコミュニケーション

個別労働紛争解決制度

個々の労働者と会社との幅広いトラブルを簡単に迅速に解決する公的な制度。
窓口になるのは労働局の総合労働相談コーナー
労働局内に設置。相談内容によって労働基準監督署やハローワークなどの専門窓口に繋げてくれる。
また、総合労働相談コーナーでは紛争調整委員会が仲介者となったあっせんも行っている。
ただし助言や指導はあくまで行政指導になり強制力はないので、解決されない事柄は裁判に持ち込まれるケースも多い。
※労働基準監督署でも労働基準法関連の相談には応じているものの、労働基準監督署は、
あくまで労働基準法関連の事柄に限られる。

紛争調整委員会:弁護士、社会保険労務士、大学教授など労務の専門家3人で構成される。

労働審判制度と民事裁判

労働基準監督署や個別労働紛争解決制度でも労使間のトラブルが解決しない場合や、当初から拘束力のある決定がほしい場合、解決場所は裁判所になります。

労働審判制度
民事裁判のハードルを下げるために2006年に出来た制度。
地方裁判所で原則3回以内の調停で解決がはかられる。
裁判内容には強制力があり、守らないと強制執行も出来る。
申し立てから審判まではおよそ1ヶ月半。
民事裁判では最速でも10ヶ月がかかり、平均1年3ヶ月。
訴訟書類の準備など手間も時間もかかる。
労使トラブルでいきなり裁判に持ち込むよりも、労働審判から民事裁判に移行した方が、
主張や立証が整理されているため裁判期間が短くなる。

労働組合への対応

労働組合からの団体交渉申し入れに対しては不当な理由なう拒否することは不当労働行為にあたる。
また、企業内に労働組合がなくとも、労働者が単独で社外の合同労働組合(ユニオン)に加入することができる。

不法労働行為とは

不法労働行為:使用者が行う、労働組合や労働者の団結権等を侵害する行為

(不法労働行為として禁止されている行為)
〇労働組合の活動(結成・加入)などを理由に解雇など不利益な扱いをする
〇労働組合に加入しない、または脱退することを雇用条件にする
〇労働者の代表者との団体交渉を理由もなく拒否する。
〇団体交渉に応じても誠実な交渉を行わない。
〇労働組合の結成や運営に介入する
〇労働組合の運営について経理上の援助をする

(不法労働行為でなく認められる行為)
〇労働組合の要求に全て応じなくてもよい
〇親会社は団体交渉に応じなくてもよい(子会社の団体交渉は子会社で対応してよい)
〇労働時間内は、組合活動を禁止してよい
〇就業期間中の団体交渉は拒否できる
〇団体交渉の場所や時間は変更できる