2025卒採用からインターンシップのルールが変わる?
採用活動はここ15年あまりの中で、10月の解禁日が12月になったり、2016卒からはさらに3月に解禁になったりと、表向きには「後ろ倒し」になっていますが(マイナビやリクナビなどの就活サイトがオープンするタイミング)、企業の動きはむしろ年々前倒しになっています。
事実2025卒採用もインターンシップどころか既に早期選考が始まっており、早い企業ではもう「内々定」を出しているような状況です(私も既に多くの学生に内定出しをしています)。
既に本番真っ只中の2025卒採用ですが、表向きにはインターンシップのルールが変わったことをご存知でしょうか?
インターンシップのルール変更は知らなかったいう方も、「三省合意改正」という言葉であれば聞いたことがあるかもしれません。
三省というのは、「経済産業省・文部科学省・厚生労働省」の3つを指します。
そしてこれまではこの三省の「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方(通称:三省合意)」によって、インターンシップを通じて得られた学生情報を採用広報活動に利用できないことになっていました。
それが、22年4月の「採用と大学教育の未来に関する産学協議会(通称:産学協議会)」において、一定の条件を満たした場合に限り、学生情報の利用について合意が結ばれ、これに対応する形で三省合意も改正され、この改正により、25年卒以降の「インターンシップ」では、一定の基準を満たす内容のインターンシップであれば、そのインターンシップ内で得た学生情報を採用活動開始後に活用できるようになりました。
インターンを分類別に分けてみる
「一定の基準を満たす」というのが、また微妙な表現ではありますが、、、
では一体どういった形式のインターンシップであれば、「一定の基準を満たす」のでしょうか?
ということで、下記のようにインターンシップを大きく4つの分類に分けてみました。この中で、タイプ3とタイプ4が「一定の条件」を満たしたインターンシップという位置づけになります。
それではそれぞれのタイプを見てみたいと思います。
タイプ1:オープン・カンパニー
企業が自分の業界の情報を提供するキャリア形成プログラムがこれにあたります。
昨今多くの企業が行っている「ワンデーインターン」がこれに該当しますが、当然インターンシップ内で得た学生情報は採用活動に使用できません。※
タイプ2:キャリア教育
こちらの分類は、大学が単独、もしくは企業と協働して正課・正課外で取り組む産学協働プログラムや、学内で企業が行うプログラムを指し、企業が出張して行う授業などもこれに該当します。こちらのプログラムもオープンカンパニー同様インターンシップ内で得た学生情報は採用活動に使用できません。
ちなみにキャリア教育の定義としては「1人ひとりの社会的・職業的自立に向け必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」となっています。
タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップ
汎用的能力・専門活用型インターンシップは、期間の半分を超える日数において、営業同行や、事業所・研究所・工場などで就業体験を行うものを指します(インターンシップ終了後にはフィードバックを受けられます)。
企業の事業・業務説明やグループワーク、発表会・報告会などがプログラムに組み込まれているものも多く、テレワークも「職場」にあたります。基本は無給ですが、社員と同様の業務や働き方の場合、労働関係法令の適用を受け有給となります。
※以下のような必要情報の開示を行い募集を行います。
プログラムの趣旨(目的)
実施時期・期間、場所、募集人数、選抜方法、無給/有給など
就業体験の内容(受入れ職場に関する情報を含む)
就業体験をおこなう際に必要な(求められる)能力
インターンシップにおけるフィードバック
採用活動開始以降に限り、インターンシップを通じて取得した学生情報を活用する旨(活用内容の記載は任意)
当該年度のインターンシップ実施計画(時期・回数・規模等)
インターンシップ実施に係る実績概要(過去2~3年程度)
採用選考活動等の実績概要(企業による公表のみ)
タイプ4:高度専門型インターンシップ
大学院の修士・博士課程を対象に就業体験をおこなう有給のプログラムです(2021年度から始まった理系の博士課程を対象とした「ジョブ型研究インターンシップ」が原型)。
基礎的な素養・能力を持った大学院生(博士)が、企業で2ヵ月以上の長期にわたりインターンシップに参加し、その評価を受けて単位を取得する制度です。
※インターンシップ実施にあたり「ジョブ型研究インターンシップ推進協議会の会員企業・会員大学」が対象
https://coopj-intern.com/membership
今後は、高度な専門性を重視した修士課程学生向けインターンシップもプログラムに入っていく予定です。
インターンシップの歴史について
ということで、インターンシップを改めて4つの分類に分けてみたわけですが、そもそもインターンシップがこれほどまで「就活のメインイベント」として扱われ出したのはいつからのことで、その背景にあるものは何なのでしょうか?
10年少し前のインターンシップといえば、いわゆる「意識高い系学生」が行っている就活の前哨戦であり、多くの一般的な学生たちにとって、本格的に就活を意識し始めるのは「ナビサイトオープン(今でいう3月の本サイトオープンの3/1)」が普通でした。※当時も「インターンシップサイト(今でいうプレサイト)」は存在しましたが、現在のように一般的ではありませんでした。
現在のように「インターン解禁(就職サイト)=就活スタート」になった背景として、、、
まず就職活動のスケジュールが変更になったということがあります。冒頭でもお伝えしたように、2016年卒の就職活動から就活解禁時期が「大学3年生12月→3年3月」と3ヶ月後ろ倒しになったことにより、広報期間が短くなった企業側が夏休みだけでなく、秋や冬にもインターンシップを行うようになり、結果学生達のインターンへの参加率が高くなりました。そして就職サイトがここぞとばかり「プレサイト」を強く推し進めたことにより、「一部学生が行う就業体験」というインターンシップの位置づけが大きく変わったのです。
そして次に大きかったのが、2019卒から公に認められた「1Dayインターンシップ解禁」です。
それまでインターンシップは「5日間以上」というルールがあり、就職サイト上での掲載ルールは甘かったものの、大学などでは広報ルールは厳しく、公には1Dayインターンは認められていませんでした。
しかし、現場において複数日程を確保する難しさなどの声もありこの年から「1Dayインターンシップ」が解禁となったのです。
これにより「業界研究」と銘打った「会社説明会」を早くから実施→早期選考に進む→年内に内定だし。という今日の早期化の骨組みが完成されたのです。
学生の個人情報を採用活動に使用していいのか?
ここまでインターンシップのルール変更や、これまでの歴史を振り返ってきましたが、「結局のところ、うちのインターンの内容で学生の個人情報は採用活動に使用していいのか?」。これが一番気になるところではないでしょうか?
結論「恐らく問題ない」はずです。
というよりも、インターンシップの内容を変更するしないに関わらず、多くの企業はこれまでと変わらずそこで得た学生の情報は際あ陽活動に使用するはずです。
もはやその意味合いやスケジュール、対象学生さえごっちゃになってきたインターンシップですが、2026卒の就職サイトもいよいよ4月スタートにむけて動き出してきているようです。
来年度からマイナビは掲載プランも分けられ、いわゆる「説明会(こうは表現されていませんが実際のところは説明会なので)」の掲載も可能になるそうで、益々インターンシップの説明会化が加速しそうです。
このようにインターンシップのルールだけに限らず、これまで行われてきた各選考段階(情報公開や選考開始)における解禁日の変更などは、行政の決定よりも就職サイト主導で動いてきました。
掲載料とその関連サービスで収益を得ている就職サイト側とすれば、多くの企業が出来るだけ長期期間掲載を行い、学生へのアプローチが出来る方法を仕掛けてくるはずです。
そんな背景もあるので、企業側としてはこれまで通り早期から学生にアプローチを行い、しっかりと採用活動を継続していくことが重要になるでしょう。今回のようなルール変更を理解しておくことは勿論重要ですが、下手に行動量を下げることはせず、しっかりとコンテンツを充実させるように取り組んでいきましょう。